コロナ禍で進む公的機関とM&Aプラットフォームの連携~ 一方で本格普及には課題も ~

M&A全般
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[非表示]

深刻化する事業承継問題の解決に向け行政、地方自治体を始めとする公的支援機関とM&Aプラットフォームとの連携が本格化している。
この背景にあるのは、コロナ禍の中、より迅速かつ多数のM&Aのマッチングに対する強い社会的要請がある。

2019年12月20日、中小企業庁は黒字廃業を回避するための『第三者承継支援総合パッケージ』を発表し、今後10年間で後継者難により廃業の可能性がある127万事業者のうちその半数にあたる年間6万者、10年間で60万者を第三者承継による事業存続を目指す方針を打ち出した。

しかし、昨年全国の事業引継ぎ支援センターが手がけた第三者承継の仲介実績は1,176件と過去最多となったものの、同じく過去最多を記録した相談社数11,514社と比べると十分とは言い難く、又民間の仲介会社を併せても第三者承継(M&A)による事業承継成立件数は年間約4,000件程度。
現状では官民の支援機関の支援を受けていない件数を考慮しても、目標とはかなりの乖離があると見られる。

一方で昨今のコロナ禍において中小企業の先行きに不安が増し、事業承継を前倒しで検討する流れが進んでいることが、官民が一体となった、より多くの、かつ迅速なマッチングの実現が急務となっている所以である。

事業引継ぎ支援センターと民間M&Aプラットフォーマーの連携

こうした状況の中、近年中小M&Aの新たなマッチング手段として急激に存在感が増しつつある民間M&Aプラットフォーマーのマッチング力に着目した中小企業庁は、第三者承継支援総合パッケージ中において初めて新たな第三者承継の担い手として民間M&Aプラットフォーム事業者との連携を明示した。

この方針に基づき2020年10月1日、同庁は47都道府県に設置した「事業引継ぎ支援センター」と連携する民間M&Aプラットフォーマーとして以下の3社を選定したと発表した。

● 株式会社バトンズ(「Batonz(バトンズ)」運営)
● 株式会社トランビ(「TRANBI(トランビ)」運営)
● ビジョナル・インキュベーション株式会社(「ビズリーチ・サクシード」運営)

これらのM&Aプラットフォームは、譲り受け希望者がおおむね5,000社以上登録されていること、累計のM&A成約件数がおおむね100件以上であることを要件として公募により選定され、今後各社は事業引継ぎ支援センターとの連携の準備が整い次第、連携を開始するとしている。

具体的には、全国の事業引継ぎ支援センターの相談情報をデータベース化したノンネームデータベース(以下、「NNDB」という。)との情報連携により、相談者に民間M&Aプラットフォームを活用した全国的なマッチング支援と事業引継ぎ支援センターの具体的なM&A支援の機会を提供。官民連携による全面的な事業承継支援を実現する予定だ。

プラットフォームとの提携のスキーム

一方事業承継、M&A促進のための政策提言においてもM&Aプラットフォーム事業者の重要性が高まっている。
2020年2月に発表された「中小M&Aガイドライン」策定にあたっては、初めて主要M&Aプラットフォーム事業者が委員に選定された。

また、2020年11月11日に発足した「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」においても有識者で構成された委員に加え、M&Aプラットフォーム事業者もオブザーバーに名を連ねている。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「M&A・バトンズ・事業承継・With コロナ」に関連するコラム

5年以内の事業承継を考えている中小事業者が30% ~コロナ禍で広がる事業継承という選択肢~

調査データ
5年以内の事業承継を考えている中小事業者が30% ~コロナ禍で広がる事業継承という選択肢~

全国の中小事業者へ事業承継に関する調査を実施(エキテン×Batonz共同調査)経産省の発表によると、後継者不在の70歳以上の経営者が245万人、10年間でその半分の127万社廃業してしまい、さらにその半分の60万社が黒字であるという数字が出ています。企業の黒字廃業を回避し、存続、発展させる一つのツールとしてのM&A(事業承継)がテレビや新聞等のマスコミで大きく取り上げられるようになりました。さらに

【M&A成約式】将来的な後継者不在を解決し、社長と従業員の夢を実現するM&A

広報室だより
【M&A成約式】将来的な後継者不在を解決し、社長と従業員の夢を実現するM&A

「自分たちが設計したものを、見て触って動かしたい」という譲渡企業の社長と従業員の夢を実現するM&Aが成立しました。機械設計事業・制御設計事業を行うアイドラス株式会社(以下、アイドラス、山梨県中央市)は、省人化設備・自動化設備などの製造業を営む株式会社鳥取メカシステム(以下、鳥取メカシステム、鳥取県鳥取市)と資本提携を結びました。両社の所在地である山梨県と鳥取県は直線距離で実に約400キロ離れていま

モーニングサテライト出演で、大きな反響をいただきました!

広報室だより
モーニングサテライト出演で、大きな反響をいただきました!

ちょうど1週間前の2020年10月7日(水)5:45~7:05放映のテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に当社代表取締役三宅卓が出演。広報チームも同行いたしました!番組では「コロナ後の日本のM&Aはどうなる」をテーマにした「点検コロナ後の世界」のコーナーで三宅が生出演し、コロナ禍におけるM&Aの状況や中堅・中小企業のM&A仲介のリーディングカンパニーとしての取り組みなどを紹介。特に、地域金融

withコロナで注目を集めるM&Aプラットフォームとその将来展望

調査データ
withコロナで注目を集めるM&Aプラットフォームとその将来展望

大型M&Aが激減する一方、中小M&Aは過去最高に世界的な新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、クロスボーダーを中心とする大型M&Aが大幅に減少する一方、中小規模のM&Aは急激に増加している実態が各種調査会社の調査結果で明らかとなりました。調査会社によると日本の2020年上半期(1~6月期)のM&A総額は2兆9111億円にとどまり、これは半期ベースで実に16年半ぶりの低水準となりました。また、金融

【アンケート調査】コロナ禍、「生き残り」のためのM&A

調査データ
【アンケート調査】コロナ禍、「生き残り」のためのM&A

新型コロナウィルスは、これまで誰も経験したことのない恐怖やいつ収束するのか、第二波、第三波はいつ起こるのかという不安を生んでいます。4月~6月の間は、未曾有の危機に右往左往していた経営者も、7月に入り今後の経営戦略や次の危機をどう乗り切るか、考えている方も多いかと思います。Withコロナ時代に、企業は自社の経営をどのように考え、どのような戦略で次の危機を乗り切るか。会社・事業の売却もしくは買収につ

中小企業がM&Aを行う背景や目的とは?手法や成功のポイントをわかりやすく解説

M&A全般
中小企業がM&Aを行う背景や目的とは?手法や成功のポイントをわかりやすく解説

急速に高齢化が進み、2025年問題が目前に迫る中、中小企業によるM&Aの件数は増加傾向にあります。本記事では、中小企業のM&Aの現状とその目的、用いられる手法、中小企業のM&Aを成功に導くポイントについて紹介します。この記事のポイント中小企業のM&Aが増加傾向にある背景として、経営者の高齢化による「後継者不在問題」と、人口減少による「縮小する国内市場への対応」が挙げられる。中小企業がM&Aを選択す

「M&A・バトンズ・事業承継・With コロナ」に関連する学ぶコンテンツ

「M&A・バトンズ・事業承継・With コロナ」に関連するM&Aニュース

ウィルグループ、CEspaceから自治体及び企業へのDX支援事業を承継

株式会社ウィルグループ(6089)は、完全子会社である株式会社CEspace(東京都中野区)の地方自治体及び企業へのDX支援事業に関して有する権利義務を、吸収分割により承継すること(以下:本会社分割)を決定した。ウィルグループを承継会社、CEspaceを分割会社とする吸収分割方式。ウィルグループは、人材派遣、業務請負、人材紹介を主とする人材サービス事業を行うグループ会社の経営計画・管理並びにそれに

トーカイ、佐藤から福祉用具貸与・販売事業等を承継

株式会社トーカイ(9729)は、佐藤株式会社(福岡県福岡市)の福祉用具貸与事業、福祉用具販売事業及び住宅改修事業(以下:福祉用具貸与・販売事業等)を会社分割により、承継することを決定した。佐藤を分割会社とし、トーカイを承継会社とする吸収分割方式。トーカイは、病院リネンサプライなど病院運営の周辺業務受託、宿泊施設などへの寝具類の貸与福祉用具の貸与及び販売等を行っている。佐藤は、壁装材・襖材など内装材

東京ガス、GHPを主とした各種サービス事業を熱供給事業子会社へ承継

東京瓦斯株式会社(9531、以下:東京ガス)は、GHP※を主とした各種サービス事業を会社分割によって、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社(東京都港区)に承継させることを決定した。東京ガスを分割会社とし、東京ガスエンジニアリングソリューションズを承継会社とする吸収分割方式。東京ガスは、ガス事業等を行っている。東京ガスエンジニアリングソリューションズは、熱供給事業等を行っている。※GHP

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース